ペンギンさんとピコピコさん

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 私はもう三十分ほど時間を延長した。店員さんは泣いている私を心配そうに見ていたけど、大丈夫だと伝えると、申し訳なさそうに部屋から出ていった。 「……」  まさか、ピコピコさんがAIだったなんて。でも、それで腑に落ちた。AIなら飲み物を飲まなくても当然だし、歌も、まあ歌うことがなかったというのも頷ける。AIだから身長もわかったのかな。 「どうしよう……」  さっきのスマホのメッセージ。多分、さっきピコピコさんが漏らしていた「博士」だろう。「博士」なら、ピコピコさんを直してくれると思う、けど……。  さっきのメッセージを見た限り、AIだと知られるのはまずいことだったんじゃないかな。でも、このままだとピコピコさんは……。  私は悩んだ末に、意を決してピコピコさんのスマホを触る。何とか「博士」に伝えなきゃ。  でも、案の定ロックがかかっていた。当然だ。どうしたものか……。  すると、またピロンと音がした。メッセージを確認する。 『大丈夫か?』  大丈夫じゃない。それを伝えたいのに、スマホが開けられない。  またもピロンと音がする。 『心配じゃ。返事をくれ』  胸が詰まる。  私だって早く返事をしたい。でも、暗証番号がわからない。確かこういうのって、何回か間違えたらしばらくロック解除できなくなるんじゃなかったっけ? 「何か、ヒントは……」  私は自分のスマホを取り出し、ピコピコさんとの今までのやり取りを振り返る。ヒントになりそうなメッセージ。でも番号をそのまま乗せるわけないし。  画面をスワイプ、スワイプしていき……。パッと私は指を止めた。 「誕生日……」  誕生日は8月8日って書いてる。でも、なあ。さすがにそれは安直すぎやしないか?  ……まあ、物は試しだ。この際どんな方法も試してみなければ。  私は入力欄に「0808」と打った。
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