久しぶりの再会

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久しぶりの再会

 ダラダラと長い校長先生の話を聞き終えて、今年も暑くて長い夏休みが始まった。先生がどっさりと出した山積みの宿題と、理科の授業で育てた朝顔の鉢植えを両手に抱えて持って帰る。『くろさわ あい』と名前入りのシールが貼られたプラスチック製の鉢植えの角が指にギリギリと食い込む。  汗でビチョビチョになりながら家の近くに着いた時、家のポストの前にウニのようなボサボサ頭で、ひょろ長い体型の男の人が立っているのに気がついた。  その人は、ガッチャガッチャと音を立てて歩く僕に気がついて、こちらを見た。  丸いサングラスに細いアゴのその人は、僕の顔を見るなりヘラッと笑った。 「藍君だね? 私のことを覚えているかな?」  びっくりした。なぜか僕の名前をその人は知っていた。よく見ると、どこかで会ったことがあるような気がする。くたびれてシワシワのワイシャツに、よれよれのズボン、足元はすり減った下駄を履いている。あまりにもうさんくさいその姿に、当てはまる人物が一人だけいた。 「もしかして……おじさん?」 「思い出してくれたかい? 久しぶりだね。最後に会ったのは入学式だったか。随分と大きくなったね」  嬉しそうにおじさんは言った。  そう、この怪しげな格好の人は、お父さんのお兄さん、つまり僕の『おじさん』だ。うっすらだけど、変わった雰囲気の人だったという記憶がある。 「うん! だって僕もう5年生だよ!」 「そうかそうか。他人の子は成長が早いね」 「他人って……自分の弟じゃん」 「弟でも他人さ」  ふっとおじさんは笑う。そうだった。おじさんはこういう変なことをいう人だった。だんだんと思い出してきたぞ。 「それで、急にどうしたの? うちに来るなんて珍しいね」 「うん。藍君のお父さんに呼ばれてね。もしかして、まだ聞いてない?」 「何を?」  お父さんはおじさんに何を言ったんだろう。 「君の両親が、8月中は仕事で海外に行くことは知っているね?」 「うん! だから田舎のおじいちゃんの家に泊まりに行くって」  僕がそう言うと、おじさんの眉が困ったようにハの字になった。 「そのおじいちゃんが腰を痛めて入院しちゃってね。どうも予定通りにはいかなくなってしまったんだ」 「え! じゃあ僕一人になっちゃうの!?」 「そうならないようにお父さんが私を呼んだんだ。つまり、おじいちゃんの代わりに私が君の面倒を見ることになった」  ふふんっとおじさんは楽しそうに言った。 「お、おじさんの家に泊まりに行くってこと!?」 「そういうことだよ。マリーも君を待っている」 「マリーお姉ちゃんが!?」  マリーお姉ちゃんはおじさんと一緒に住んでいる人で、僕を可愛がってくれたお姉ちゃんだ。この人も少し変わった人だけど、優しいマリーお姉ちゃんのことはよく覚えてる。 「行きたい!」 「よし、じゃあ決まりだね。では一週間後の朝に迎えに来るよ。宿題を忘れず持ってくるように」  おじさんはまるで先生みたいに言った。 「はーい!」  僕が元気よく返事をすると、おじさんはカランコロンと下駄を鳴らしながら帰って行った。  わくわくする気持ちとたくさんの荷物を持って、僕は「ただいま!」と家に入った。  きっと、楽しい夏休みになるはずだ。  僕は心を踊らせた。  
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