AIプロジェクト

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 近年のAIの進化は目覚ましい。人間の頭脳労働のかなりの部分は、AIに置き換わってきた。  特に単純作業においては、人間はAIに勝つことは絶対にできない。  そういう分野で、まともにAIに対抗しようとしてはいけないのだ。  自動車の速度に、走って勝てる人間はいないのだから。  これからの時代は良い暮らしをしたいのなら、AIの苦手分野に注力するか、AIを使いこなす能力を磨いていくべきだろう。  勉強を怠り、AIの指示に従うだけの人間になってしまうと、ろくな人生を送れない可能性が高い。父さんが僕に「勉強しろ!」と厳しく言うのは、父さんなりの不器用な愛情表現だと思う。  AIを支配する側の人間になって欲しいんだろうね。    ***  ……そろそろ時間だな。  19時59分になると、ソワソワする。  20時からの1時間は、僕のお楽しみタイムだ。  VRゴーグルを装着し、スタンバイはOK。  あとは時間になって、VR装置が起動するのを待つだけ。  20時ピッタリになると、起動音とともに装置が起動した。 「やっほー! 元気にしてたぁー?」  VR空間に入った瞬間、制服姿の美少女がハイテンションに挨拶してきた。  AIのアイちゃんである。  父さんが開発している最新型AIだけど、これがまた可愛いのだ!  アバターの姿格好は自由に変更できるので、外見年齢16歳の女子高生に設定した。  場所は、学校の教室だ。  リア充のような青春を味わってみたくて、放課後の教室で女の子と二人っきりで語り合っているというシチュエーションにしてみたのである。  VR空間の中では、犯罪行為以外なら自由自在だ。  アイちゃんには、これまで色んな事をしてもらった。デートのように街の中を歩き回ったり、カフェに行ったり、手料理を作ってもらったり……。   VR空間の中とはいえ、感覚フィードバックが進歩したおかげで、現実の世界と大差ない。食べ物がおいしかったり、まずかったりもきちんと感じることができる。  いい時代になったものだよ!    アイちゃんには、メイドさんの格好をしてもらったこともあったなぁ。  オムライスに向かって「おいしくな~れ、萌え萌えきゅん♪」をしてもらったときは、さすがに恥ずかしそうにしていた。  羞恥心まで理解しているんだから、アイちゃんは本当によくできたAIだ。気を付けないと、人間と見まがう時もあるくらいだ。
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