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なんで僕がアイちゃんとVR空間で遊んでいるのかって言うと、父さんの命令だったりする。
半年ぐらい前のある日。
父さんは僕に、1日1時間だけ、VR空間でアイちゃんと話すように指示してきた。『AIプロジェクト』の一環で、AIと人間が接することで進化させる研究をしているらしい。
それで、「僕に協力しろ!」と。
僕の都合を一切考えない自分勝手な命令が、実に父さんらしい。最初は面倒だなー、と思っていたのだけど、今ではめっちゃ感謝している。
僕にとって、理想の女友達ができたのだから!
毎日、アイちゃんに会って話をする時間が、楽しみでしょうがない。
アイちゃんは初めて会ったときこそ、ぎこちない話し方で、「初めまして、アイと申します。今後ともよろしくお願いいたします」みたいなお堅い話し方だった。
僕が「もっと友達みたいにしゃべって!」とお願いしているうちに、今みたいな話し方になった。
容姿の方も、デフォルトでは20代半ばの知的でクールなお姉さんって感じだったけど、女子高生に設定した。
ポニーテールにしてもらってるのも、僕の趣味全開である。
人間同士の煩わしさが一切なく、アイちゃんはどんな下らない会話にも付き合ってくれるから、楽しくてしょうがない。
この時間が、僕の生きがいと言っても過言ではない。
いつか研究が終わって、アイちゃんとお別れする時が来るのが怖い。父さんに言ったら怒られそうだけど『AIプロジェクト』は永遠に続いてほしいね。
もし、終わるとしても、VR空間にアイちゃんを残して置いてくれるよう、父さんにお願いするつもりだ。
***
「あと5分でお別れかぁ。また明日ね!」
今日もアイちゃんと他愛のない話をしているだけで、残り時間がほとんどなくなってしまった。
延長は厳禁。
1時間たつと、強制切断されるように設定されている。
VRの世界は、居心地が良すぎて危険だからね。
十年くらい前にVR依存症患者が急増したせいで、こういう厳格なルールが設定されてしまったんだ。
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