願いを叶えるカフェ【ヴー・リアン】へようこそ。

2/12
前へ
/12ページ
次へ
ガチャンと紅茶のポットの音が鳴り、 コースターの上には、綺麗な紫色の上半が六裂してそり返っている花が特徴のカップが置かれた。 そして、ポトポトと音を鳴らしながら、可愛らしいカップに紅茶を注ぎ込んでいく店員さん。 「お客さまは、ご緊張されておられましたので、 緊張が解れるハーブティーをご用意させていただきました。」 お召し上がりください。と、最後に付け足した。 私は両手で水を掬うように優しくカップを持った。 口まで持っていくと、フワッと鼻にハーブの匂いが掠った。 それだけで、強張っていた体の力が、ふぅ〜と、ゆっくりと抜けていく。 ズズッと音を立てながら、暖かい紅茶を口に入れた。 身体の内側からポカポカと温まっていく。 そういえば、お姉ちゃんもハーブティーが好きだったな…。 仕事終わりにいつも飲んでたっけ。 これを飲むと毎回頑張ろうって思えるって言ってた。 ハーブティーの余韻に浸っていると、「お客さま」と声をかけてきた店員さん。 「は、はい!」 「では、本題の方に入らせていただければと思います」 そう言った店員さんにコクリと頷く私。 「本日は“叶えたい願いがある”ということですね?」 「はい…」 どうしても叶えたい願いが、私にはある。 誰にも言えていない、願いがー。 「それは、お姉さまにお会いしたい、という内容でよろしかったでしょうか?」 店員さんの言葉にビクリと体が跳ねた。 目を見開いて、バッと店員さんに視線を向ける。 けれど、店員さんの顔は良く見えない。 「何、で…」 どうしてわかったんだろう? 私は、お姉ちゃんに会いたいってことがー。 「会え、るんですか?」 そもそも、そこが疑問だった。 だって、お姉ちゃんはー。 「ええ、お会い出来ますよ」 店員さんは、会えるのを当たり前かのように言う。 「本当、に?」 「ええ、お会いできます」 もう一度、首を縦に振りながらはっきりと言った。 そこまではっきりと言われると、期待してしまう。 お姉ちゃんに会えるかもって。 だって、私のお姉ちゃんは、簡単に会うことができない。 その理由は、一週間前に事故で死んでしまったからだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加