願いを叶えるカフェ【ヴー・リアン】へようこそ。

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ーそう。 もう、お姉ちゃんはこの世にいない。 存在していないのだ。 それなのに、会えると断言する店員さんに違和感を覚えるも、 本当に会えるかもしれないという嬉しさの方が勝ってしまう。 「ただし、お客さまの願いを叶えるには、対価が必要です。」 「対価、ですか?」 何の対価だろう? お金?命の寿命?頭脳?友達関係? 色々でてきて、自分の中で頭がパンクする。 「そうです。 こちらもタダでお客さまのお願い事は聞けないのです」 そう…だよね。 タダではお願い事なんて叶えられないよね… 「対価は、何ですか?」 お金?命の寿命?頭脳?友達関係? あ、若さとか? それなら喜んで差し出そう。 だって、お姉ちゃんに会えるんだもの。 「お客さまが思っているような対価ではないですよ」 顔に出てたのか、店員に読まれてしまった。 「どんな対価ですか?」 私が考えた対価ではないのなら、どんな対価を求めるんだろう? 「申し訳ございません。 対価はお客さまのお願い事次第になりますので、お教えすることができません。 ただ…」 店員さんは、一呼吸置いて、言葉を続けた。 「美しさだったり、記憶だったり、頭脳だったり… ああ、視力や聴力だったこともありますね。 あとは、人間関係だったりもしたことがあります」 表情は上手く読み取ることができなかったが、きっと無表情だと確信した。 だって、あまりにも淡々と答えているからだ。 店員さんは、どうされますか?と、もう一度私に尋ねる。 対価…は正直、怖い。 何を求められるかわからない。 でも…それでも…私はー。 ぎゅっと膝の上に置いた両手を強く拳に握った。 「お姉ちゃんに、会いたい…」 どうしても、 何としてでも、 会いたいの。 ううん、会わなきゃいけない。 「…かしこまりました。 では、ご準備させていただきます」 店員さんのその言葉にコクリと頷いた。 「1点、確認させていただいてもよろしいでしょうか?」 「はい」 「お姉さまが常に身に付けていたものはお持ちですか?」 お姉ちゃんが、常に身に付けてたもの… 思い出して見る。 …あ! 鞄の中を開け、小さい汚れたウサギのキーホルダーを机に置いた。 「これです!」 手のひらサイズの茶色く汚れたウサギのキーホルダー。 これは、私とお姉ちゃんと二人で一緒に買ったお揃いのものだ。
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