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「お借りいたします。」
丁寧にウサギのキーホルダーを受け取り、紅茶の入っているカップの近くに置いた。
「では、お客さまの願い事を叶えていきます。
ですが、これだけお約束してください」
「約束、ですか?」
店員さんは、首を縦にして頷いた。
「お客さまがお姉さまにお会いできる時間は5分のみです」
…5分…だけ?
「5分過ぎてしまいますと、お客さまはこちらに戻って来られません。
永遠に真っ黒い世界を彷徨ってしまいます」
「……」
「5分しましたら、こちらのベルが鳴ります。
こちらを必ず身に付けてください。」
ドアベルと同じ銀色のフクロウが乗っている掌サイズの小さいベルを渡す店員さん。
私は、コクリと頷いた。
5分だけでもいい。
お姉ちゃんと会えるなら。
会話ができるなら。
それだけで、十分だ。
「では、いってらっしゃいませ」
店員さんはそう口にして、紅茶の入ったカップに小さい汚れたウサギのキーホルダーをポチャリ、と落とした。
その音と同時に、強い光が私を照らした。
あまりにも眩し過ぎて目をぎゅっと閉じた。
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