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光が落ち着き、ゆっくりと瞼を開ける。
「紬」
…え?
ずっと、聞きたいと思っていた声。
もう一度聞きたいと思っていた声が目の前から聞こえてきた。
バッと目を勢いよく開け、
目の前を見ると、死んだはずのお姉ちゃんが立っていた。
「お、ねえ、ちゃ…」
目に少しずつ溜まっていく涙で、唇が震えて上手く声が出ない。
「ふふっ、なに泣いてんのよ」
優しく微笑みながら、私の目尻に自分の親指を当て、涙を拭ってくれた。
ーお姉ちゃんだ。
お姉ちゃんだ…
本当にお姉ちゃんなんだ…!
そう思うと、会えたことが嬉しくて、更に涙が出てしまう。
「お姉ちゃん…お姉ちゃん…っ」
お姉ちゃんの背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめる。
ずっと、お姉ちゃんに会いたかった。
本当に会いたかった。
ずっと、ずっと、お姉ちゃんに言いたいことがあったの。
伝えたいことがあったの。
「よしよし、そんな泣かないの」
私の頭をそっと優しく撫でてくれるお姉ちゃん。
そんな優しいお姉ちゃんにぎゅっと胸が温かくなる。
私は、涙をぐっと止め、お姉ちゃんから少しだけ離れる。
「紬?」
「あのね、私、お姉ちゃんに言いたい、ことがあるの」
「うん?」
何のことかわからないお姉ちゃんは、首を横に傾げる。
私は、深呼吸をして、胸に手を当て、自分自身を落ち着かせる。
お姉ちゃんと目が真っ直ぐ合う。
「ごめんなさい。」
頭をペコリと下げる。
「え?」
お姉ちゃんが今驚いていることは、声色で感じ取れる。
「ずっと、ずっと、お姉ちゃんに言いたかったの」
ーそう。
お姉ちゃんが死んでしまう当日にお姉ちゃんと喧嘩してしまった私は
お姉ちゃんに言ってはいけない言葉を口にしてしまった。
それを、ずっと後悔していた。
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