願いを叶えるカフェ【ヴー・リアン】へようこそ。

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・ 「あの時、お姉ちゃんなんかいなくなれ、なんて言うんじゃなかったって…」 あの時の言葉が、お姉ちゃんとの最後の言葉になるなんて思わなかった。 ずっと、お姉ちゃんは傍にいてくれると思ってたから。 帰った時に、またいつものようにごめんねって言えばいいと、そう思ってた。 「本当は、お姉ちゃんにありがとうって。 たくさんありがとうって、そう言いたかったの」 育ててくれて。 自由にさせてくれて。 何不自由なくしてくれて。 何よりー。 「愛してくれてありがとう…っ」 両親がいない分、私をたくさん愛してくれたお姉ちゃん。 なのに、私はー…っ。 ーぎゅっ 私より、少しだけ大きい体に私の体がスポリとハマった。 「何言ってんの。 私の方こそ、ごめんね。 紬の気持ちをわかってあげられなくて」 震える声で言葉を紡ぐお姉ちゃん。 泣いてる…? 顔を見たいけれど、強く抱きしめられていて顔を見ることができない。 続けて話すお姉ちゃん。 「こうして、わざわざ私に会いにきてくれてありがとう」 そう言って私を離し、優しい顔で微笑んだ。 …っ! 「おね…ちゃ…っ」 お姉ちゃんの表情に涙が溢れ出てしまう。 「私にとって紬は“愛”そのものだった。 仕事で辛くても、紬がいれば頑張れたし、 恋愛やおしゃれよりも紬が自分の中で一番だったの。 紬がいれば、私は何だってできてた。」 お姉ちゃんの言葉に、きゅーっと胸が締め付けられる。 そんなの私も一緒だ。 お姉ちゃんがいるから、寂しくなかった。 お姉ちゃんがいたから、大嫌いな勉強も頑張ろうと思えた。 「でも……、もう私は紬の傍には居られない…」 ドクンと胸が抉られた。 改めてお姉ちゃんが死んだんだと、嫌でも再認識してしまう。 お姉ちゃんは、私の手を両手でそっと握る。 「お姉ちゃんは、もう紬の傍に入れないけど、空から見守ってるから。 何かあったら、すぐに空を見上げて? お姉ちゃんが、見守ってるからね」 ぎゅっと私の手を強く握る。 温かさなんて、感じないはずなのに、 お姉ちゃんの手からものすごく温かみを感じた。
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