猫系男子とモブ男

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「お待たせいたしました。ご注文のオムライスです。コーヒー食後にお持ちいたしますね。」 夏目は本を閉じて俺の方へゆっくり向いた。 「はい、ありがとうございます。うわぁ今日は一段と美味しそうですね。」 猫のように吊っている目が徐々に見開き、さらにこちらを見つめてくる。 そんなしっとりした目で「美味しそう」何て普通に言える所が‥ただのイケメンではないということがわかる。 出来るイケメンは普段これを女の子だけじゃなく男の子にもやってるんだなとしみじみ感じた。 「夏目様にいつもご注文頂いて、お陰様でオムライス上達しまして。いやー最初は下手くそで本当に不味いオムライスばかり提供してしまって‥」 「いやいや、全然そんな!僕は秀斗さんの作るオムライスが世界一好きなんです!いや、星の数ほどある異世界の中でも1番好きです!」 「い、異世界?!(笑)あ、えーとありがとうございます!」 夏目の口から異世界という単語が出てきて思わず笑ってしまった。 いや‥まさかイケ好かないイケメンにオタクの趣味があるのか? 俺はアニオタだから流行りの異世界モノは色んな作品を見ている。 まあ異世界ものといえど、アニメ界は今やそれ系で埋め尽くされてるが、いったい夏目はオタクだとして何を見ているのか‥初めて夏目に興味を持った。 「あ、あのーもしかして夏目様はアニメお好きですか?」 自分から雑談を振ったお客は初めてかもしれない。 今までお客とは表面上の会話しかしたことがなかった。 一応フルネームくらいは知っているだけだった。 「あ、‥はい好きです!最近ちょっと異世界モノのアニメを色々と‥」 最初の方少し返事に間があったが、やはりアニメオタクだった。 「へー!何がお好きなんですか?」 「うーんと、ある日突然異世界転生で最強騎士になりまして、とか、異世界で鍛えたスキルで今世にリベンジして無双した件とか!」 何と!こんな偶然あるのかと思うくらいこのイケメンと俺の感性はどうやら似ているらしい。どっちも今どハマり中の作品だ。 「本当ですか?!俺そのニ作品今1番ハマってて、最強騎士は劇場版もう3回も見にいきました!いやー今度スキリベも劇場版公開するし楽しみですね!」 「そうですね!ふふ、秀斗さんの嬉しそうな顔久しぶりに見ました!あ、良かったら一緒に劇場版見にいきませんか!?」 まさかのイケメンからのアプローチ?!うんうんなるほど‥ここは逃すわけにはいかない‥なぜなら、これを機に夏目様と友達になれば‥もしかしたら‥可愛い女の子を紹介してくれるかもしれない‥そしてめでたく可愛い彼女できて‥! 瞬間的にここまで未来を考察することができた。 「ええ!本当ですか!夏目様がいいならぜひ一緒に観にいきましょう!」 夏目はコクッと満面の笑みで頷いた。 まさかこんなイケメンと一緒に映画を‥俺には唯一の友達が一人いるけど、20代になってから誰かと映画なんて行ったことがない。 久しぶりに学生時代に戻った気分だった。 それにしても‥嬉しそうな顔を久しぶりに見たって何のことだ? 仕事中はいつも笑顔を振りまいてるつもりだったが、そんなふうに見られてたのか? この人いつも本ばかり見いてると思っていたけど、案外人間観察好きなんだ。ま、俺もそのスカした面はよく見ていたけど、こんなモブ男の俺を見る人って何が楽しくて見てるんだ?まさか、俺を見て優越感に浸るタイプ? だとしたら捻くれてる奴だけど、わざわざ映画に誘う事もないだろう。
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