シンとゆきちゃん

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おれの家では2匹の猫を飼っている。2匹とも元野良猫で、茶トラ猫のシンと、黒猫のゆきちゃん。どちらも2年前の冬、ぐうぜん同時期にうちの庭にあらわれた。 猫好きのおふくろが捕まえて、隣町の「猫おばあさん」に持っていき、去勢と避妊手術を施してもらったのだ。 猫おばあさんといっても、むかしよく河原にいた「猫をたくさん連れている得体の知れないおばあさん」とは違う。町の助成金を利用し、動物病院で野良猫を手術してもらう仲介をしている人のことである。 おれも隣町の猫おばあさんに会ったことがあるが、ごく品のよさげなご婦人であった。 シンとゆきちゃん。どちらも年齢はわからないが、シンは茶色部分に白い毛がたくさん混じっているし、動きもよぼよぼした、どうみてもおじいちゃん。ゆきちゃんは、毛並みがつやつやしていてまだ若い娘っ子だ。 飼っているといっても、ほとんどは外に出ている。家に入れていても2匹とも、出してくれー、と騒いで障子を破ったりするので、仕方なく出入り可能にしているのだ。 朝と夕のメシの時間になるとちゃんと帰ってきて、日中だいたいは庭の日陰で寝ている。元野良猫の習性ゆえか、家にこもりっきりは我慢ならぬようだ。 昨今は猫を放し飼いにするのはよくないとする風潮があるが、こういう事情なので、手術もしていることだし、許してくれ。
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