シンとゆきちゃん

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「わしら猫は、生肉が好物なんや。猫は魚が好物というのは誤解やで。たいがい、魚より肉が好きなんや。そこはやっぱり、ライオンとかと同じ仲間のケモノやからな。覚えといてくれるか」 「そうや。いつもの加工物のごはんは、まずいし飽きるんや。この家のは安もんで、添加物いっぱいやし」 ゆきちゃんがこんな、楚々からはほど遠い、ズケズケとものをいう女だったとは……。 「実を言うとな、わしら、隣の家でもメシもろとるんや。悪いけど、隣のメシの方がうまいわ」 「ちょっとおっちゃん。余計なこと言わんといてや」 「お前が先に安もんとか言うからや。おふくろさんに、たまには牛の肉食わしてと伝えてくれんか。焼かんでも、生でええから」 「生はダイレクトにスタミナつくねんわ。ああ、口なおしに一服したい。あんた。コンビニいって、マルボロのメンソール買ってきてや」 へ? おれは絶句し、スマホを取り落としそうになった。 「こいつはこんな女やで。だまされたらあかんで。まあわしも、だまされながらついていってしまうんやがな。へへ」 おれはその場で、しずかに、アプリをアンインストールした。
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