じいちゃんと僕と夕焼けと洋楽と

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✤ ✤ ✤ 「いいところなのに、なにが不満なんだろうね」  僕は自宅のリビングで、遺影のばあちゃんに語りかけた。 「好きなときにお風呂に入れるし、ご飯のメニューも選べるし、消灯時間も決まってないし、欲しいものがあればAIロボットを使ってAmazonで買うこともできる。不自由はないはずなのに、ずっと不機嫌なんだ。すごく不幸、みたいな顔をするんだ。なんでかな」  僕は別に、答えを求めているわけではなかった。  年を取ると、わがままになったり頑固になる。  職場の先輩やSNSからの情報で「年を取るってそういうものだ」と聞いていたから、じいちゃんのも、理由なんかなくて、ただ年のせいなんだと僕は思っている。  だから、答えを求めてはいなかった。  ただ、少し疲れていて、心のモヤモヤを吐き出していただけ。 「なんでかな」  ピコン。  僕の腕の下敷きになっていたiPhoneから音がした。  見ると、画面が光り、Siriが起動している。 「質問を理解できませんでした」  僕は苦笑いをこぼした。 「きみには聞いてないよ」
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