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✤ ✤ ✤
「じいちゃん。じいちゃん」
週末。
いつも通りに施設を訪れたけれど、じいちゃんはやっぱり部屋にこもっていて顔を見せてくれない。
僕はしかたなしにドア越しに声をかけた。
「最近、よく聞く曲があってね、夕焼けと合うんだ。プレイリスト送るから聞いてみて。どれも気分がよくなる曲だよ」
施設専用のAIロボットにデータを送るため、僕がiPhoneを起動したとき、目の前のドアが開いた。
じいちゃんが開けてくれたんだ。
突然のことに驚いて動けないでいたら、じいちゃんが僕の尻を叩いて言った。
「突っ立ってないで入れ。音楽、聞かせてくれるんだろ」
「あ、うん」
僕は慌てて部屋に入った。
じいちゃんの部屋はカーテンが開けっ放しで、窓からはちょうどきれいな夕焼けが見えている。
僕はiPhoneの音楽アプリを立ち上げた。
はやく音楽を流そうと、再生ボタンを押そうとした指が止まる。
「じいちゃん、あのさ。じいちゃんがかけてよ。ロボットに『音楽をかけて』って」
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