じいちゃんと僕と夕焼けと洋楽と

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「みきとがかけてくれればいいだろ?」 「練習だよ。じいちゃんがロボットをちゃんと使えれば、僕がいないときにも聞けるでしょ」 「みきとが来たときに聞ければいい」 「でも、僕、毎日は来れないからさ。来れないから、毎日一緒に聞こうよ。聞いてほしい」  僕がお願いすると、じいちゃんは「はあ」とため息をついて、ロボットを見た。 「音楽をかけて」   ロボットはじいちゃんの声をしっかりとキャッチした。  耳なじみのいい柔らかな音が、ロボットのスピーカーから流れ出る。  じいちゃんは目を閉じて、音楽に耳を傾けた。  僕も目を閉じて、音楽に浸った。 「洋楽か」  じいちゃんの低い落ち着いた声が言った。 「みきとは洋楽、好きだもんな。中学生の頃は、かっこうつけてただけだったけどな」 「本当に好きで聞いてたんだよ」 「どうだかな」  僕が目を開けると、じいちゃんが、夕焼けのオレンジ色の光の中で、昔みたいに朗らかな笑みを浮かべていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加