ラブリ

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ラブリ

 鬱陶(うっとう)しい梅雨が終わりを告げるといよいよ夏本番だ。  寝苦しい夜が続いていた。日が暮れてもいっこうに涼しくならない。今夜も熱帯夜だろう。  不意にインターフォンが鳴り玄関のドアを開けるとブレザー姿の女子高生が微笑んだ。 「はじめまして。ラブリよ」  アイドルのように可愛らしい美少女が会釈をした。 「えェッ、ラブリ?」  ボクは面食らってしまった。 「このほど、お客様がお買い上げになったAI搭載のラブロイド・ラブリです」  丁寧に彼女は挨拶をした。 「え、マジか?」信じられない。  玄関にAI搭載のラブロイドが届けられた。まるで本物の女子高生のようだ。  ミニスカートから覗いて見える肉づきの良い太ももが眩しい。しかもものスゴい巨乳でアイドル顔負けのルックスだ。おそらくどこのアイドルグループでもセンターになれるだろう。 「ユーザー様のお名前は?」 「え、ど、どうも、ボクは由宇(ユウ)です。星野由宇(ほしのユウ)です。よろしく」  緊張してドキドキしてしまった。まともに挨拶すら出来ない。大学生だというのに我ながら情けない。  AI搭載のラブロイドだとわかっているのに、醜態をさらしてしまった。  最近ボクは女子高生と話したこともないので緊張してしまった。 「フフッ、よろしく。由宇(ユウ)クン」  ラブリは甘えるようにボクに抱きついてきた。きっとこれがハグなのだろう。  柔らかな胸の膨らみがボクの胸板に押しつけられた。 「えッ、えッえェ……?」  思わずボクは驚いて立ちすくんでしまった。もちろん美少女とハグをした経験なんてない。  香水の匂いなのだろうか。それともシャンプーの匂いなのか。甘い香りが玄関に漂っていた。
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