神無月の百鬼

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神無月の百鬼

 物の化け物で物の怪だ。  旧暦10月いまだと11月にあたる期間だ。10月は神無月と呼ばれる。神様がいないというか出かけている。  出雲は神様が集まるので神在月になる。  神様がいない月なので、神無月はそうでないものが活発になる。  物の怪は捨てられた物達の復讐のための姿である。  まだ使えるのに、まだ住めるのに捨てられた物達が捨てた者に復讐するのだ。   ペットボトル瓢箪合戦  ある夜、少女はコンビニに行く途中ペットボトルが行進しているのを見た。  数体猫の玩具になっている。 「私達は上等だと思います瓢箪より上等です」  ペットボトルが訴える。 「小童が」  声の方を見ると瓢箪達が行進してやってくる。  ペットボトルと瓢箪は争い始めた。  ペットボトルは瓢箪に時代遅れと、瓢箪はペットボトルに安物と罵っている。ペットボトルはカッター瓢箪は包丁を手にして結構物騒なことになっている。  しばらくして、お互いぐちゃぐちゃになって終わった。 「困るなあ」  箒とちり取りと袋がやってきて片付けていく。 「物は大事にね」  箒とちり取りと袋はどこかへ行ってしまった。  にゃあと声がした。  猫が包丁を握った瓢箪をくわえている。 「まだ使える寒いから家に帰るよ」  猫は少女に話しかける。  猫が話したとか君の家じゃないとか色々思ったが受け入れた。  少女は化け猫と化け瓢箪を手に入れた。   弁当讃歌   ある夜、少年が塾の帰りに弁当箱の行進を見た。 「お弁当を食べよう」  弁当達は叫んでいる。 「お弁当箱のお弁当が一番おいしい。そう思うだろ」  弁当箱が少年に話しかける。 「私は弁当を美味しく保存できる」  その木の弁当箱は少年と一緒に過ごし一緒に焼かれたのだった。   ハレのヒの家  少女は山で家を見た。  和風の古い家だ。珍しいと少女は中に入っていく。  お粥が七つ用意されている。小豆粥だ。  小豆粥は温かい。 「選べ」  声がした。少女が悩んでいると。 「選べ」  少女は一つ選び食べる。 「うまいか?」  味がないと少女は思ったが美味しいと答えた。  うれしいなあ めでたいなあ  うれしいことは一人じゃ嫌だ  少女はそんな声を聞いた。  がりっ。  小豆粥の中に古銭が入っていた。  気づくと家はなくなっていた。少女は残った小豆粥を捨てようか悩んだがさっきの声を思い出し食べた。そしてお椀と箸と古銭を持ち帰った。  少女はなんとなく運のいい人生を送ったのだった。     
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