呪いはいつまでも

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俺はダンジョンで呪いを受けてしまった 常にダメージを受け続ける上に体が重く動きが鈍い まるで足枷を嵌められているようだ どうやら高度の呪いらしく、アイテムや教会では解呪できなかった だがここからかなり遠い北の街に居る魔術師ならば解呪可能らしい 動きが鈍っているこの体で向かうのは厳しいが、それでも頑張るしかないだろう 一週間後 俺は這う這うの体でどうにか街に辿り着いた 魔術師に高い金を払って解呪を依頼する 「はいこの指輪に注目して 今から強い光が出るけど目を逸らすんじゃないぞ」 魔術師がムニャムニャと呪文を呟くと指輪が強烈な光を放つ 視界が真っ白に染まり目が痛い しばらく何も見えなかったが、次第に元に戻ってきた 「はい解呪終わり いま何が見える?」 「金ピカで趣味の悪いローブを纏った痩せぎすのハゲた魔術師が見えます」 「正直でよろしい 手に付けた数々の指輪やイケメンなこの顔は見えるか?」 「そのアイテムの数々が全体的にダサいですね」 「全部高価で貴重なアイテムじゃ 体に変化は?」 言われて気づく 体が軽く羽根のようだ いままで体を縛り付けていた呪いは全て消え去り、ダメージも受けず飛ぶように動ける 久々に味わうノーストレスな感覚に心まで飛んでいきそうだ 「性格と料金は最悪ですけど技術は超一流ですね」 「礼ならもっと素直に言え」 呪いとおさらばした俺は解放感を存分に味わうために酒場へと繰り出した 浴びるように酒を呑み、看板娘にちょっかいを出して店を叩き出される 酔いも回って浮かれきった俺は気持ち悪い程の笑顔で宿屋に凱旋した 「あ!おかえりなさーい」 部屋に入ると見知らぬ女がいる 流石に酔いすぎたかと頬を叩くが鈍い痛みが響くのみ 「夢じゃないですよ~ 私を置いていくなんて酷いじゃないですか」 段々と酔いが覚めてくる 腰の短剣に手を伸ばしながら冷静に女を観察した 「そんな難しい顔をしないで ほらほらこれこれ、お土産です」 エヘンとドヤ顔で布や指輪を渡される この趣味の悪い金ピカのローブ、高そうなダサい指輪はもしかして……? 「これでも思い出せないですか? 仕方ないですね大ヒントです」 そう言いながらなれなれしく体に触れてくる ズシンと体が重くなり、まるで足枷を嵌められたような嫌な感覚が体を包む これはようやくお別れしたはずの―― 「ずーっといつまでも、何があっても一緒ですよ これからもどうぞよろしくお願いします」
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