2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
君と花火と秘密の夜
ただ、それが綺麗だった。
色とりどりの花が、20くらいは咲いただろうか。
この辺りから、一際大きくカラフルな花火が咲くようになった。
フィナーレだ。
ふと、ゆかりが自分の手を僕の手に重ねた。花火から目を逸らし、僕の目を静かに見つめた。
「…どうしたの?」
僕は聞いた。
ゆかりは、一度僕から目を逸らし、考えるような素振りを見せながら、もう一度僕を見た。
「…あのさ」
「うん」
花火が、頭上に大きく咲く。
「…もし…もし私が…」
「…私が?」
花火が儚く散った。
「……ロボット」
「え?」
ゆかりは、もう一度しっかりと僕を見つめた。
ゆかりは、深く息を吸い込んで言う。
「…私が、ロボットだって言ったらどうする?」
最後の花火が咲いた。
「…どうするって…」
僕は混乱のあまり頭が真っ白だった。
もしロボットだったらって…ゆかりはロボットってこと…?
でも、そうだとしたらつじつまが合う。
__ゆかりの、あの冷たい手も。
__あの、ぎこちない笑顔も…
さびしそうに僕を見つめるゆかりを見て、僕は本物の自分の気持ちを、ありのままに言った。
「どうもしない。…ゆかりは、ゆかりだもん。ゆかりがたとえロボットだとしても、ロボットだから、ゆかりなんじゃない?」
ゆかりは、初めて泣いた。
あの、ぎこちない笑顔で。
「ずっと、一緒にいてね…ずっとだよ」
ゆかりがそう言って、僕の手を握る。
僕も答える。
「うん、ずっと一緒」
そして神様は、僕が一番欲しかったものをくれる。
最初のコメントを投稿しよう!