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自分を言い表す言葉を的確に当てられた動揺は隠しつつ、どういうこと、と訊いた。
「透明ってことは、向こう側まで突き抜けて見えるじゃん。だから変な腹のさぐりあいとか騙しあいとかしないで、お互い素直でいられるよなーって思った。きみは確かに目立たないし、きみよりかっこよくて元気な男だって世界に死ぬほどいるのはわかってるけど、それでもあたしはきみがよかったんだよね」
それは僕にとっても同じだ。ユウカは僕について気になることがあったらなんでも伝えてきたし、よくいる「おまえが察しろよ」というタイプの女性ではない。だからこそ一緒にいて居心地がよかったし、僕は僕で素朴な疑問をこうしてユウカにぶつけることができている。
どれだけお互いに腹を割ったところで、最後にはどうしても破れない薄皮のようなバリアがあるものだ。それが僕とユウカの間には最初から存在していないような感覚さえある。
あれだけ他人に侵されることも、他人に入り込むことも避けていた僕が、今は自然に防壁を解除している。
おそらくは、彼女に対してだけ。
「それに、透明人間になりたかったはずのきみが、あの時あたしを助けてくれたっていうのはさ。きみって本当は、誰かに自分のこと、気づいてほしかったんじゃないの? 自分がここにいるんだよ、ってことを」
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