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少しでも話すきっかけが欲しくて、コーヒーを淹れると書斎のドアをノックする。
「お父様、コーヒーをお持ちしました。」
部屋に入ると机にメガネを置いて父が私を見た。
「いたのか。」
「はい、あの……」
「拓馬くんとは順調でなによりだ。お前みたいな娘でも望まれて結婚出来るんだから良かったじゃないか。」
私と拓馬さんが結婚すれば、業務提携がより密になり父は仕事がやりやすくなると考えているようで、私のためなんて1ミリも考えていない。でもかわいい美晴の話だとしたらどうだろう。
「でも…拓馬さんは、他に…」
「女がいようが、問題ない。そのくらいで目くじら立てる事はないだろう。ちゃんとした会社の跡取りの妻になれるんだからな。」
「美晴が」
「拓馬くんの相手が誰だろうと関係ないだろう。お前だって喜んでいたはずだ。それに相手とそのうち別れるかもしれないんだ。」
私に被せるように言って来た事で、拓馬さんの相手が美晴だと父は知っていると気付いた。きっと知っていて拓馬さんの代替案に乗ったのだろう。そうだとしたら何を言っても無駄なんだと思う。
「わかりました。夜遅くにすみませんでした。」
頭を下げ、屋根裏部屋に戻るとこれからどうしたらいいか真剣に考えた。
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