三日月

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「オネーサン。何してるの?」 「俺たちがいい事教えてあげよっか。」  金髪にピアスをいくつも付けた黒Tシャツと光沢があるスーツを着ているがシャツのボタンが3つ外れているふたりが声をかけて来た。 「私、仕事探しているんです。」 「おっ、いい仕事あるよー。」 「金も結構もらえるから。」 「紹介してくれるんですか。」  完全に手詰まりだと思っていたが、救う神はいるらしい。この辺りのキャバクラのスカウトさんらしい人は何人かいたが声をかけてくれたのは彼らが初めてだ。 「もっちのろんよ。」 「まぁ、その前に味見お願いしたいケド。」  味見って何か料理の味見をしないと働けないのだろうか。 「味見ですか。料理はそれなりにできますが。」 「オネーサン、天然かよ。」 「まぁ、その方がオレたち的にはラッキーじゃん。」 「まずは面接をするから個室行こーゼ。」 「細っこいけど、ヤレんなら問題ないだろうしな。」  細っこいの一言に拓馬さんが言っていたガリガリという言葉を思い出す。 「あの…痩せていても大丈夫ですか。」  お店で着る服は貸して貰えるといいのだが、細過ぎて借りられる服がなかったら困ると思った。   「大丈夫、大丈夫。」 「行こ、行こ。」  酒臭い2人に両側から肩を抱かれ嫌悪感を覚えるが仕事を教えてくれるならありがたい。我慢して一緒に歩き出すとすぐ近くのビルから出て来た背の高い男の人が私たちの前に立ち塞がった。
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