三日月

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「お兄ちゃん達、うちの店の横でそういう事されると迷惑なんだけど。」 「えっ、あ、キューテンさん。べ、別に俺たちは、そんなんじゃ…」  ふたりは彼を見て、明らかに『まずい』という表情になった。   「俺の名前を知っているって事は、この辺で遊んでいる奴だな。」 「あ、い、行こうぜ。」 「そうだ、俺たち用事があったんだ。」  ふたりは私の事なんかすっかり忘れてしまったのか、こちらをみる事なく逃げるように走って行ってしまった。 「えっ…仕事…」 「お嬢さん、あんな手に引っかかったら、泣きを見るだけだぞ。」 「どうしてくれるんですか。仕事がないと今夜寝る場所もお金もないんです。」  つい助けたつもりであろう男性に文句を言ってしまう。   「お嬢さん、訳アリか。とりあえずウチ来い。」 「ウチ?」 「そ、ここの二階にあるカフェバー『ムーンライト』。」  男性は見上げるように二階あたりを指で指した。 「あ、私、手持ちがないんですけど。」 「俺の店だから。今日は俺の奢り。話聞くよ。」 「でも…」 「気になるなら皿洗いでもホールでも仕事あるからやってくれたらいい。」    改めて彼をみると158センチの私より20センチ以上高い上に鼻筋が通ったきれいな顔をしている。前髪は横に流しスッキリと額を出しているのが色っぽさを際立たせている。たぶん10人いたら9人がカッコいいと言い、女性なら彼に誘われたらついていきそうだ。  でも私は彼の顔より今は仕事が見つかるかどうかが問題だったから、俺の店と言うくらいなら店長さんだろうと思い、そちら重視で着いて行く事にした。
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