三日月

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 階段を上がると重厚そうな木の扉に黒地に金色でmoonlightと書かれたプレートが付けられているのが見えた。  扉を押して入るとドアベルがカランカランと控えめに音を立てる。  黒い床にアイボリーの壁紙、控えめな照明の中1ヶ所だけ黄味がかった丸いライトが当てられていてmoonlightと言う名前を表しているようだ。 「すみません、まだ開店…あれ、キューテンさん。お疲れ様です。」 「よーすけ。パスタ頼む。」 「あ、ダメな物ある?」  私は首を横に振る。好き嫌いなんて言える環境じやなかったから苦手はない。 「へぇ、キューテンさんが女の子連れてくるって珍しいっすね。」  よーすけさんがサッとツナおろしスパの皿をカウンターに置きながら聞いて来た。 「んー。そこで拾った。」 「拾ったって猫じゃあるまいし。」  よーすけさんが、こちらを見るので私が答える事にした。 「はい、そこで拾われました。」 「ちょ、ちょっとキューテンさん、未成年じゃないっすよね。」   「あ、歳聞いてなかった。聞いてもいいか。」 「一応25歳です。」  よーすけさんが、私を上から下まで見てくる。 「どうせガリガリで年相応に見えないって言いたいんでしょ。」 「ま、まぁスレンダーって言葉が似合うと思うよ。」  客商売らしくよーすけさんがリップサービスしてくるから、軽く返す。 「ありがとうございます。褒め言葉と受け取っておきますね。」
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