三日月

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「あちゃー、家出は衝動的にやっちゃダメだよ。えっと莉乃ちゃんだっけ、どこのお嬢さまだよ。せめて貯金は持って出ないと。」  よーすけさんは、そう言って少し呆れた顔になったがキューテンさんは少し考え込んでいるような顔をしている。面倒ごとを拾ったからやっぱり警察に連絡するとか言うのかと心配になるが、彼の言葉は違っていた。 「莉乃ちゃん、うちの店で働け。住むところも上にあるから。」 「キューテンさん。それって…」  何か言いかけたよーすけさんに被せるようにキューテンさんが説明してくれる。 「ここの上に今使っていない部屋があるんだ。まぁ寮みたいなものだけど、しばらくそこにいればいい。仕事は出来ることやればいいだろ。」 「ありがとう…ございます。」 「ほらパスタどんどん食え。よーすけの和風ツナは絶品だぞ。」 「いただきます……っ、美味しいっ。」  食べ終えると手伝いをしようとする私の手を引いてキューテンさんは、一度店を出てエレベーターで上階へ案内してくれた。
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