三日月

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 与えられた部屋に入るとこの部屋は普段使っていなかったのは間違いないようだ。例えるなら……実家にもあったゲストルームと言ったところか。  ベッドメイクを終えるとキッチンに移動し、冷蔵庫を開けてみた。食材はそこそこ入っている。  気になってキューテンさんがたまに使うと言っていたベッドルームをそっと覗いてみると明らかに昨日まで普通に使っていたとしか思えない部屋だった。  キューテンさんは自分の部屋を寮と言って私にただで貸してくれると言うのだろうか。  気になって2階の店に戻ってみるとよーすけさんとキューテンさんが仕込みをしながら話しているのが聞こえてきた。 「キューテンさん、上貸しちゃったら今夜どうするんすか。」 「別にどうにでもなるよ。実家に帰ってもいいし。」   「俺、びっくりしましたよ。キューテンさんが女の子拾ってくるとか寮って言って自分のお気に入りの部屋に住まわせるとか。いままで女の子に誘われても上の部屋のことは誰にも言わなかったのに。」   「うん、俺も自分に驚いてる。でもほっとけないだろ。」 「まぁ確かに。莉乃ちゃん、悲壮感漂っていましたからね。」 「だからこれでいいんだよ。」  私は何も言えずに静かにドアを閉めると一礼し部屋に戻った。キューテンさんには申し訳ないが、しばらくここに住まわせてもらって一日も早くアパートを探そうと決意した。  
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