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上弦の月
「おはようございます。」
「莉乃ちゃん、おはよう。」
時間は夕方4時。おはようと言う時間ではないが、この挨拶にも2ヶ月も経つと違和感が無くなってきた。
「今日はよーすけさん、ひとりですか。」
「キューテンさん?」
「いえ、そういうわけじゃ…」
「じゃあどういうわけ?」
「帳簿の確認を…」
「やっぱりキューテンさんじゃん。」
私は料理ができる事もあり厨房でよーすけさんの補助と経理事務を任されるようになったと言うかキューテンさんがいない日はスタッフルームから出ないように言われていて、いる日でも客層を見てOKが出ないとスタッフルームで過ごしている。
moonlightにはよーすけさんの他にふたり学生のアルバイトがいるが曜日交代のため、毎日大体店にいるのは私とよーすけさんだ。
それなのに店に出ない仕事って、『それでいいのだろうか。』とキューテンさんに聞いたのだが『大丈夫、ちゃんと役に立っている。』と言われてしまうと何も言えない。
キューテンさんはただの店長ではなくオーナーで、他にも店があるらしく毎日は顔を出さない。でも学生の頃にオープンさせたmoonlightは特別に思い入れが強いらしく顔を出す頻度は他より比較的多いらしい。
最初の日、よーすけさんに猫みたいに言われたが、今ではみんなにすっかりキューテンさんの飼い猫扱いされている。
確かにお部屋は借りているし、お仕事も世話してもらったけど私はちゃんと従業員として働いているだけなのに…
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