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そして私が10歳の時に今度は母が胃癌にかかってしまった。気がついた時にはすでに転移して手の施しようがなく病院で日に日に弱っていく母を見ているのは辛かったし、ひとり残される不安を感じながらもなんとか母に笑顔を見せるように頑張った。
そんな母を父は一度も見舞うことがなかったまま母は入院して3ヶ月ほどで亡くなった。
葬儀は、さすがに父が取り仕切っていたが私のそばに寄り添う事もなく事務的に行い、父の秘書と名乗る侑子さんが女主人のように振る舞う。
母の親友だったさえこおばさまも来てくれたが、私の横に侑子さんがいたためかあまり話もできないまま見送る事しか出来なかった。
それから1週間も経たないうちに父は、侑子さんと私と同じ歳の美晴を我が家に連れて来たのだ。
「莉乃にもまだ母親は必要だろう。侑子の言うことをしっかり聞くんだぞ。美晴は半年くらいしか違わないがお前の妹だ。可愛がるようにな。」
「パパ、美晴は莉乃と仲良くするからね。」
「美晴はいい子だな。」
最初は父が一緒にいてくれるようになる事や母を亡くした私に優しく寄り添ってくれたと思っていた侑子さんという存在にひとりぼっちにならないで済むのだと喜んだ。
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