新月

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 しかし父と美晴の仲睦まじい様子と葬儀の時の献身さが嘘だったかのような侑子さんの射るような視線を受け、私がこの家族の除け者だと肌で感じる。それは当たっていて仲良くすると言った美晴は、すぐに私を部屋から追い出し自分のものにするとお気に入りの服も何もかも奪い笑って言った。 「あんたと母親のせいでママと私が我慢して来たんだから、これからは私たちの言うことはなんでも聞くのよ。」 「それってどういう意味なの。」 「あんたたちがいたせいで、パパとママがなかなか結婚出来なかったの。あんたなんか誰からも愛されない偽物の子どものくせに。」  ある程度、大きくなってわかったのは侑子さんと父が母との結婚前からずっと恋人同士だった事と美晴が父の実子だという事。それから離婚しようと考えていた頃に母が癌と診断された事で、祖父から母が受け継いだ財産を手に入れる為に離婚せずに母が亡くなるのを父たちが待っていたという悲しい事実だった。  実際、同居を始めてすぐに2人は入籍したらしいが、周りには同じ歳の子どもがいるので娘の為に結婚したといい父親振って周りに説明していたようだ。
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