新月

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 それからすぐに屋根裏部屋に押し込まれ、学校に行く時間以外は家事をするように侑子さんから言われた。いままでいてくれた家政婦の茂子さんは辞めさせられ、代わりに侑子さん達が住んでいた家で働いていた一美さんに教わるように言われたのだ。  侑子さんと美晴は何もせず、一美さんも私がいない時間以外の通いで自分の担当の仕事が終わるとさっさと帰ってしまうので、最初は掃除や洗濯、そのうち朝夕の食事と買い物も私の仕事になった。  高校を卒業すると父は私を大学に進学させはしたが私の希望なんか全く聞かず、いいお嫁さんアピールして政略結婚の駒にするためだけに地元女子大の家政学部以外はお金を出さないと言われ、そこに入学する。    なんとか選択科目を他の学部に求めて自分の中で折り合いを付けた4年間が終わり、義母や異母妹がそのまま家事手伝いでいいだろうと言う中、腰掛けでも社会人経験がある方がいいと珍しく父が言って 父の会社、坂本建設の総務課で働き始めた。それでも父の言葉がなければ就職さえ出来なかったと思う。  仕事が終われば直帰して、休みの日は一日中自宅の家政婦扱いだから職場では残業もやらないお嬢様と思われているし、せっかく貰った給料はそのまま義母に取り上げられるから外で働く意味が無いように思えるが、自宅にいるだけより気分転換できるという意味においては充分な環境だった。 
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