新月

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 彼には今日、送別会で遅くなると伝えていたが、まさかあの子を私たちのマンションに連れ込んで、こんな事になっているとは思わなかった。  しばらく呆然としていたが、このままここにいて2人と鉢合わせは良くないと考え、先ほどローテーブルに置いたバッグを取りにリビングに戻る。  慌てたせいでしっかりと閉められなかった寝室のドアの隙間からコトが終わったらしい2人の会話を始めた声がリビングにいても聞こえて来た。 「ねぇ、そろそろ帰って来ちゃうんじゃない。」 「いや、まだメッセージ来ないから大丈夫だろ。莉乃には帰る時に連絡するように言ってあるから。」  おそらくスマホを確認しながら拓馬さんが答えていた。  そう言えば普段、宴会に参加する事のない私は心配だからと帰る時に連絡するように言われていたのだが、拓馬さんと交際中も一緒に暮らし始めても実家の家事は私の仕事になっているため、拓馬さんが仕事終わりに迎えに来るまで実家にいるという生活なので、帰りにメールをするという習慣がなくて、すっかり忘れていた。 「いつもはあれの迎えに行くまで、時間調整できるけどねー。」 「そうだな。これからはうちで働くから、サボってるのバレるかな。」
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