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① 石塚映人(あきと)は全てを間違えた
こんなはずじゃなかったのに。
石塚映人は窓側の席で、誰にも聞こえない様に心の中で呟いた。
ここは野川高校一年六組の教室。武蔵野の自然に囲まれた、自由な校風が売りの都立高校だ。
中学時代、想いを馳せた夢の高校生活。彼女が出来て、友達もたくさんいて。何でも無い事で盛り上がり、バカをやって、時にはケンカをし……。漫画や映画では散々見てきた、絵に描いた様な青春の日々…。
だが、現実はそう甘くはなく、彼の高校デビューは失敗に終わった。一日一人に話し掛けて交友関係を増やすという当初の壮大な計画も、今では遠い記憶。黒歴史だ。
映人は現国の眠たい授業をバックに、ボンヤリと窓の外を眺めた。
夏休みが終わり、体育祭の準備と共に、秋の気配が漂い始めている。
一学期の時とは違い、各々所属するグループに分かれ、クラスのスクールカーストも構築されてきていた。
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