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そう思った時、誰かが止めてくれた。
さくらが顔を上げると、幸奈だった。その毅然とした姿に気圧されたのか、女子たちは何も言わずに睨みながら離れていった。
「大丈夫?」
「…うん、ありがとうございます」
「良かった。じゃあお互いがんばろ」
そう言って、笑顔で手を振って自分のところに戻っていく。
何て自然な笑顔なんだろう。私が苦手なやつだ。幸奈に手を振り返しながら、さくらは思った。
でも、あの時は上手に出来ていたっけ。大森くんが撮ってくれた素材を見せながら、石塚くんが褒めてくれていた。
「もう一度、ああ言う風に笑ってみたいな」
用意の合図が聞こえ出す。さくらはグッと構えると、「スタート!」の声と共に走り出した。
× × ×
「ええ~、七十四位だったんですかぁ?」
死にそう地面に寝っ転がっている映人に、さくらは煽るように喋り掛けた。
「いや、寝てないし。元々そんな早くないから頑張った方だから」
「俺は四十位だけどな」
横山が映人の頭を叩いた。適当にやるとか言ってたのに、途中で置いていきやがって。
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