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荷物をまとめると、映人は部室を出て行きながら、
「それから、悪いけど鍵、お願いしても良い?」
「…良いですけど」
「ありがと。これからよろしくな」
映人は足取り軽く、和花の救援に向かった。
「…シスコン?」
一人虚しく、さくらのクッキーをかみ砕く音が部室内に響いた。
⑦ 春の嵐! 新入生はエース級
春休みもあと僅かの昼下がりの午後。吉祥寺のアトレはなかなかの人で賑わっている。
何でこんな人混みの中にいるのだろう。映人は思った。
コスメショップでは幸奈と妹の和花が何やら楽しそうに談笑しながら、試供品を試している。その様子を眺めながら、映人は複雑な心情を浮かべた。
事の発端は和花に、高校の合格祝いに吉祥寺に連れて行けとせがまれた事による。この歳になると兄妹で出掛けるのは気が引けるが、おそらく何か買って貰うという魂胆があったのだろう。
特別仲が良いわけでも無いので、これはこれで頼られるのは兄としては嬉しいものだ。休日が潰れるのは不本意だったが、素直に快諾する事にした。で、来てみれば沢城もいた、と言う訳である。
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