あおむらさきっ!

93/107
前へ
/107ページ
次へ
「悪いよ。自分のは私、出すから」  和花はそう言う幸奈にノンノンと指を振って、 「デートで男の人が出すのは当然ですから」  いやいや、それは昔の話で、当然男が出すもの、いや割り勘だで、最近も炎上していたのを見た気がしたが。メッシーか、俺は。てか、デートでは無いだろ。 「良いって、出すよ。悪いし」 「別に良いぞ。合格祝いのついでだし」 「お兄ちゃん、男前。大好き」  嘘をつくな、嘘を。まぁ良いけど。美味しそうに食べる和花を見ていたら、これくらい安い物に思えてくる。 「…そ? ありがと」  幸奈はようやく納得したのか、ケーキを食べ始めた。         × × ×  カフェでまったりとくつろいだので、ようやく解放されるかと思ったら、和花はお母さんに夕飯の支度をするのを頼まれたと言って、さっさと一人、駅に向かってしまった。  映人と幸奈は二人残されて、しばらく沈黙が続いた。   せっかく吉祥寺まで来たし、このまま映画でも観て帰ろうかと思ったが、先手を打たれてしまった。余計な気を遣いやがって。ある意味、出来た妹だと言えるのか。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加