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「悪いよ。自分のは私、出すから」
和花はそう言う幸奈にノンノンと指を振って、
「デートで男の人が出すのは当然ですから」
いやいや、それは昔の話で、当然男が出すもの、いや割り勘だで、最近も炎上していたのを見た気がしたが。メッシーか、俺は。てか、デートでは無いだろ。
「良いって、出すよ。悪いし」
「別に良いぞ。合格祝いのついでだし」
「お兄ちゃん、男前。大好き」
嘘をつくな、嘘を。まぁ良いけど。美味しそうに食べる和花を見ていたら、これくらい安い物に思えてくる。
「…そ? ありがと」
幸奈はようやく納得したのか、ケーキを食べ始めた。
× × ×
カフェでまったりとくつろいだので、ようやく解放されるかと思ったら、和花はお母さんに夕飯の支度をするのを頼まれたと言って、さっさと一人、駅に向かってしまった。
映人と幸奈は二人残されて、しばらく沈黙が続いた。
せっかく吉祥寺まで来たし、このまま映画でも観て帰ろうかと思ったが、先手を打たれてしまった。余計な気を遣いやがって。ある意味、出来た妹だと言えるのか。
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