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「どうする? 途中まで一緒に帰るか?」
どうせ多磨駅までは同じ電車だ。誰かに見られる可能性もあるが、ここまで来たらどうしようもない。
「…少し歩こっか」
思わぬ提案に映人は一瞬怯んだが、ここで断ったら後で和花に何を言われるか分かったもんじゃない。また口を聞かなくなっても困る。
「…ああ」
お互い変に意識しながら、サンロード商店街の方へ歩き出した。
しばらくどこへ入るわけでもなく、ただただ二人並んで、人混みの中を歩着続けた。
気まずい。中学からの同級生とは言え、女の子と二人で出掛けた事など無いので、何を話したら良いのか分からない。
それは幸奈も同じなのか、いつもと違って大人しい。学校でもバイト先でも、明るく元気に話し掛けて来るのに。何だか新鮮な感じだ。
そう言えばこの辺に昔バウスシアターって言う映画館があったんだっけ。今ではラウンドワンになってしまって、もはや影も形も無いが。親父がここでよく、ジム・ジャームッシュや爆音上映のホラー映画などを観ていたと話していた事があった。
「部活、楽しい?」
などと余計な事を考えていると、幸奈が話し掛けてきた。
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