あおむらさきっ！

「ちょっと観てみたいかも」
　そう言って幸奈は笑った。その笑いはどっちの笑いなんですか。やっぱり失笑の方なんですかね。
　結局アーケードを突っ切って終わりの道まで来てしまった。これ以上行っても、特に見るお店も無い。
「先帰っても良いぞ。俺、観たい映画あるし」
　元来た道を戻ろうとすると、幸奈は立ち止まって、
「…私も一緒に観ようかな」
　そう言って、少し恥ずかしそうに、目線を外した。
「は？」
「ほら、行くよ。どこにあるの」
　戸惑う映人の背中を押しながら、幸奈は「早く！」と促した。

　　　　　　　　×　×　×

　パルコの地下に出来たミニシアターに映人と幸奈は入っていった。昔の名作も含めたシネコンではあまり掛からない映画が上映されているので、たまに映人も活用している。
「へー、こんなとこあったんだ。よく来るの？」
「たまにな。チャリですぐだし、概ね府中か調布のシネコンだけど」
「吉祥寺までチャリで来てんの？　マジ？」
　マジマジ。ウチは母ちゃんが電車賃勿体ないから、出掛けられるとこは家族総出でチャリなの。今日は和花さまが主導だから、電車だけど。