1億通りのストーリー

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「やはり今の世の中にも先生が必要なんですよ。」 アシスタントの小雀ちゃんが新作をとんと書かず売れない漫画家である私を奮い立たせようと躍起になっている。 「先生なら書けます!続きを想像するだけでわくわくして眠れなくなるような、人々の心に深く刻まれるような、心のよりどころになるような、そんな作品を先生なら書けます。AIに負けないでください。」 「小雀ちゃん、手がとまってるよ。」 指摘されて小雀ちゃんは慌ててべた塗りの続きをする。そう、私も全く書かないわけではない。書かなければ生活ができないのだ。ただ、それは小雀ちゃんが訴えているような作品ではない。ジャンル云々ではなく、根本的に異なる。  対象が人間向けではない。AI向けなのだ。
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