不純情なピュア・ブルー

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ブツブツ文句を言っていた高橋が、はっと何かを思い出したように目を見開いた。 「っていうか、教授が早く来いって怒ってましたよ!」 「……あー、行かなくちゃまずい雰囲気だった?」 「そりゃ、もう準備万端でしたよ!ほら早く支度してください」 髪ぼさぼさじゃまずいですよ!ロッカーにスーツありましたよね!? とてきぱきと身支度を手伝ってくれる高橋には本当に頭が上がらない。 今日は、数学界の巨匠である俺の指導教授がインタビューを受けるとかで、それに同席するように言われている。 でも、正直めんどくさい。これから研究の世界で生きていこうとしている俺への気遣いだということもわかっている。院生の行く先なんて決して明るいものじゃない。研究者になれるのなんて一握りだ。少しでも顔を売っておいた方がなにかのつながりになる。わかっているけど……。 「さ、これでなんとか大丈夫です!ほら、いってきてください!」 俺のため息なんて無視した高橋に背中を押される。 「そういえば、インタビューっていうか、鼎談みたいでしたよ?」 「え、鼎談?俺、立ち会うだけじゃなくて、話すの?!」 「らしいです。教授と真宮さんと、あと……うわぁ?!」 そこで、壁の時計を見た高橋が悲鳴をあげた。はやくはやく、時間すぎてます!とぐいぐい廊下に放り出される。仕方がない、お世話になっている高橋と教授には俺は逆らえない……。 ふぅ、と深呼吸をして教授室のドアをノックした。返事を待って扉を開ける。 午前中特有のきらきらした軽い光の溢れる教授室。廊下の薄暗さとの落差で一瞬視界が霞んだ。 明るさに目を細めながら、教授と、その向かい側にいる俺に背を向けた人に目を凝らす。 ……ふわり、ゆらり。 俺の方にゆっくりと振り返った、その人は―――……。
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