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「アインシュタインっていいこと言うよねー」
本格的に大学入試が始まる前の12月始め。しんとすべてが落ちたような静けさを孕んだ真夜中。
毎年この時期に早々に行われる俺たち高校3年生の卒業テストの前日。
亜緒はいつものようにベランダを伝って、ひょいっと俺の部屋に現れた。
眉をハの字にして「卒業テストやばい!助けて!澄生さま~」と上目遣いに手を合わせて俺を拝んでいたのに、いつのまにやら俺のベッドに仰向けになって眠たそうにしている亜緒を見てため息をつく。
「いま、アインシュタイン関係ないだろ。ちゃんとやれよ。誰のためにこんな夜中に勉強付き合ってやってんと思ってんだよ」
横になった亜緒の胸の上に広げられている数学の教科書が、呼吸に合わせて上下している。
おい、そのゆったりとしたリズム、完全に寝る気だろ。
「うー…、、ごめん、ごめん。澄生、怒んないで」
だるそうにベットから起き上がってこっちを見た眠気を纏った目。
……このまま寝かせてやりたいと思ってしまうけれど。
「……卒業できなくても知らねーぞ」
「それは困る。大手予備校のCM決まりそうなのに。高校卒業できなかったら縁起悪くてつかえないよね……」
「だったら、ちゃんとやれ。ほら、これに出そうな問題まとめといたから。とりあえずこれやれば卒業はできるはず」
「わぁ…、さすが澄生だぁ…、ありがと」
「ほら、さっさと起きろ。解説してやるから」
「うん!」
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