不純情なピュア・ブルー

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亜緒がなんとか俺の作ったプリントを解き終えると、もう夜明けに近い時間。あと30分もすれば白々と新しい太陽がさすような明るさを零し始める時間だ。 夜が明ければ、この時間も終わる。 俺たちは高校を卒業して、亜緒はこの場所を卒業して……。 ぐーんっと背伸びをした亜緒が、飾り気のない大きなあくびをした。 「あー眠い。でも、寝ちゃったら起きれなくて学校行けなそう」 「そしたら、お前留年決定だな」 「それは絶対避けなくちゃ。事務所に怒られる」 怒り狂う事務所の人でも想像したのだろうか、亜緒がぎゅっと目を眇める。けれど、それは一瞬でころっと表情を変える。 「ねぇねぇ!澄生!いつものさ、あのクッソまずいコーヒー飲みたい!つくってきて!」 「おい、人んちのインスタントコーヒーをクソまずいとか言うな」 「え、褒めてるんだよ?!あれ飲むと眠気飛ぶし」 「まずすぎて?」 「ちがうよ!澄生が初めてつくってくれたコーヒーの味だから」 「……」 「変わらずまずくて、やっぱりこれだなぁ、好きだなぁって思うんだよね」 ふんわりと微笑む亜緒の頭の中で、俺の作るまずいコーヒーは”好き”の称号を得ているらしい。また俺の欲しい”好き”とは違うけれど、それでもその意味のない言葉を胸の奥底にしまってしまう。 亜緒のどうでもいい”好き”をコレクションして、そんなものに縋って。繋がりに安堵して。 「……作ってくるから、待ってて」 うん!と嬉しそうに頷いた亜緒を部屋に残し、キッチンでインスタントコーヒーの瓶を手に取った。
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