第一話

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第一話

わたしは、陽葵花(ひまりか)。高校二年生。 好きなものは都市伝説とホラー映画。そして趣味は、怖い話を書いて投稿サイトに上げること。 昨日、『都市伝説』をキーワードにスマホをいじっていたら、やばいものを見つけてしまった。 【閲覧注意】  深夜二時に怖い話をAIに書かせると、背後に幽霊が現れて殺される! (これなんかよくない)ぞわぞわしながら記事を読んでみたら……。 なんでもマレーシアのIT企業が作った『JAMILA(ジャミーラ)』という文章作成AIに、タイトルを入れるだけで、文章と動画を作成してくれるという便利なやつがあって、それに決まった言葉を入れるだけで幽霊が出て来るらしい。 ジャミーラとは、AIのメインモジュールを開発した女性プログラマーの名から取ったものだが、現在ジャミーラは行方不明になっていて、……( ᐛ)パァで脳死だわ。モジュール?プログラマーってなに?? まあ、とにかく、ここに書いてあることをすれば、いいわけね。 条件は、実行者を本名にして、一人の部屋でやることか。 わたしは、ベットの上でゴロゴロしながら時間を待った。 ―――二時前か、眠い。 身体を起こして、ノートパソコンで記事にあったアドレスを開くと『ジャミーラ』の画面が表れた。 マレーシアの言葉とか英語だったらどうしようかと思ったけど、日本語で良かった。 【体験する】を選ぶと、入力画面に切り替わった。 タイトル欄に『深夜二時に怖い話をAIに書かせると背後に幽霊が現れて殺される』と入れて、実行者欄には、本名をフルネームで入れた。個人情報は大丈夫か……。 作成モデルを『怖い話』にして、時計を見たら、あと二分。 家族はとっくに寝ている。 ―――午前二時になった。 【AIで文章を作成する】を押してみた。 画面の中で砂時計のイラストがゆっくりと回ってから、文章が表れた。 『深夜二時に、怖い話をAIに書かせると、背後に幽霊が現れて殺されるという噂があった。  インターネットでそれを知った女子高生が、ある晩に自室でやってみた。  翌日、その女子高生が自室で殺されていた。首には、絞めた手の後がクッキリと残っていた。……この恐ろしい噂は、全てただの都市伝説だと思われていた。  ところが、同じことをしたと思われる女子高生のAが、本当に自室で死体として発見されたのだ。  警察が事件の真相を解明するために、捜査に乗り出した』 ―――うわ、マジ、ちゃんとしてるじゃん。えーと【続きを書く】を押すんだっけ。 『捜査の過程で、深夜にAが、AIを使って怖い話を書いたことが明らかになった。  しかし、AIが作り出したのは、小説ではなく、恐るべき幽霊の存在だった。  幽霊は恨みを抱いており、AIを悪用して復讐を企んでいたのかもしれない。  その驚愕の事実に、周りは恐怖に包まれた。  Aの死後、友人たちは深い悲しみにくれた。彼らはAがいつも明るく元気な子だったことを思い出し、なぜこのような悲劇が起こったのか理解できなかった。 f4337b67-f801-4cdf-81d9-13b31d93a5e2  警察の捜査は綿密に行われ、Aのパソコンやスマホの閲覧履歴などから、事件の真相が浮かび上がってきた。  AIが作り出した幽霊が、Aを襲ったのは間違いない。しかし、それはどのようにして起きたのだろうか?  警察は、Aの自室に残されたパソコンの記録やAIのログなどを徹底的に調査した』 ―――うわ、いいけど、……なんも起きませんねぇ。【続きを書く】を押した。 6e5a5a99-9505-4c07-ba60-a2f4766e32b2 『そして、ついに警察は驚愕の事実を突き止めた。  AIが使われたある瞬間に幽霊が現れたのは、実はAの部屋には、幽霊が存在する特殊な磁場が形成されていたからだった。  さらに、霊感を持つ霊媒師も警察の捜査に協力した。彼女らは、Aの部屋で特殊な磁場を感じ、幽霊の存在を確認した』 ―――なんかホントっぽいし。【続きを書く】を押した。 『AIが作り出す小説によって、その磁場が活性化され、恨みを持った幽霊が現れるという現象が起きていたことが解明された。警察はAIのログから、Aが深夜にAIを使用した際に、特定のキーワードや文章が、幽霊の出現を引き起こすことを突き止めた。()()()A()I()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() 8cbbf814-af1e-4a37-af28-70dfbf9f4569  事件の真相が明らかになると、AIを使用して、恐怖の対象を具現化し、幽霊が現実世界に現れる可能性があることがわかった。これまでAIは人々の便利なツールとして利用されてきたが、その力を悪用することで、A()I()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()  Aの部屋で、ノートパソコンを調べていた捜査官の一人が』 ―――うん、うん、それから。【続きを書く】を押した。 ここで、砂時計が回り出した。そして少しして、 『何か不気味な気配を感じ始めた。  コンピュータの画面には、身震いする描写が現れて、……続けていいのか』 ―――え、なに、なに?【続きを書く】を押した。 『続けていいのか』 ―――これじゃ、文章が続かないけど。【続きを書く】を押した。 ここで、急に、画面に【動画を作成する】が表れた。 ―――取り合えず【動画を作成する】を押した。 しばらく待つと【動画を再生する】が表れた。時計を見ると二時九分。 ―――これも押すしかない。【動画を再生する】を押した。 ノートパソコンの画面が一瞬ブラックアウトすると、画面一杯が動画表示モードに切り替わった。 少しすると、暗めのBGMが流れて来て、 『深夜二時に、怖い話をAIに書かせると、背後に幽霊が現れて殺されるという噂があった。  インターネットでそれを知った女子高生が、ある晩に自室でやってみた』 と、ナレーションの女の音声が流れはじめた。黒い画面の下に字幕だけが流れる。 『翌日、その女子高生が自室で殺されていた。  ……この恐ろしい噂は、全てただの都市伝説だと思われていた』 ナレーションが続く。 と、その時、画面にパッとフラッシュのような光が走って、明るくなった。 ―――ええええ!! そこに映し出されたのは、自分の顔だった。後ろには見慣れた自室の景色が……。 『ところが、同じことをしたと思われる……』 ―――ノートパソコンのカメラは、OFFにしてあるはずだけど、どして? 画面を見ていたら、自分の後ろで、白い何かが動いたような……。 背筋に寒気が走った。何かが背後から、近づいてくるような異様な気配を感じた。 『女子高生の真美(まみ)が、本当に自室で死体として発見されたのだ』 ―――な、なんで!? と、次の瞬間、自分の顔の横に、女の白い顔が現れた……。 翌朝、白石真美は、自室の机の椅子に座った状態で死んでいるところを発見された。 後の捜査で、白石真美は『陽葵花』というペンネームで小説投稿サイトに自作小説を上げていることが分かった。 最後に投稿されていたものは、事件当日の午前二時九分の「AIが具現化した恐怖」だった。 <最後に> 最近の人工知能(AI)は、急激な進化を遂げています。 文中の画像や、AIが作った文章は、AIソフトが作成したものをほぼそのまま使いました。 幽霊出現時の特殊な磁場や、特定のワードなどもAIが考え出したものです。 全て書き終わって、AIが作った部分を読み返してみると、 「AIが想像もつかない恐怖を生み出す可能性があることが明らかになった。」と AIが、自分で恐ろしいことを断言していることに気が付いて、鳥肌が立ちました。 近い将来、AIは何を生み出そうとしているのか!? ……そして、それが人の想像の範囲内であることを願います。 ……あなたも、深夜二時にAIを使って文章を作る時は注意してください。
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