強く、美しき鎧

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強く、美しき鎧

 箱を開け、手首と首元に軽く一振り。イランイランの甘く大人な香りが広がり、時間が経つと高貴なバラの香りがふわりと現れた。女性らしさとたくましさの両方を持ち合わせる、彼女らしさ満点の香りだと思った。  前髪を指先でつまみ、サッと整える。化粧も服もばっちり決め、鏡の前で最終チェック。今日の私は、いつもとひと味違う。彼女の香りを纏い、頑丈で美しい鎧を身につけているのだ。  「よしっ!」  私は小さく気合いを入れ、ドアノブをガチャリと回し外へ出た。  ありがとう、炎の魔女さん。あなたのおかげで、私は”本当の私”を見つけることができました。  あなたにとっては何気ない言葉と行動の数々だったでしょうが、私にとっては大きな勇気につながりました。いつか、あなたに手紙を送ります。素敵なレターセットとペンを見つけたら、一番にあなたに送りたいと思ってしまうのです。その時は、言葉が重くならないようにしないと、ですね。
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