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エリア52
カイは定員の少ない使い古された飛行機に搭乗した。アメリカ本土からD国への定期便は無い。二つの国を経由しなければたどり着けない。シートにもたれながら、昨日の顛末を思い起こす。
『トーク管理社』で見聞きしたことをモニカに報告すると、半日もしないうちに旅券と現地の紙幣、金塊数個、古びた衣服が用意された。CIAの行動力には舌を巻く。そして、カイはまだ解放されないのだと悟った。何が何でもD国のエリア52を突き止めなければならないようだ。
「着陸いたします。安全ベルトをしっかりと装着下さい」
機内アナウンスが流れる。カイは急ぎ、ベルトを締めた。
空を飛ぶこと十数時間、やっと陸地に到着した。事前に調べた情報では、D国は一般市民の日収が10ドルも無い最貧国ということであった。現地語はあるが、元イギリスの植民地であったため、英語が通じる。この点には助かった。『オープントーク』で現地語の英語翻訳はできるにはできるが、まだ改善点も多い。母国語が通じるのはありがたいことだ。
カイはまず、空港のトイレにこもり、スーツを脱ぎ捨て、用意されたボロの衣装に着替えた。CIAから貸与された端末を操作し、『エリア52』候補地を表示させる。この国では情報インフラが未発達のため、スマホの電波が悪い。それも見越しての端末供与なのかと考えた。
候補地は広い森林の中央に存在している。空港のロビーに降り立ち、タクシーを呼ぼうかと思案する。しかし舗装されている道路は首都や空港周辺のごく一部だという情報がある。タクシーが悪路を走破できるとは思えない。
しばらく空港周辺を観察しながら目的地へ行く方法を模索する。カイの目の前に大型トラックが止まった。どうやら輸入品を運ぶ業者のようだ。耳をそばだてると、現地民がトラック運転手と、目的地は『エリア52』だと話しているのが聞こえた。
これだ。とカイは思った。利用させてもらおう。
できるだけ気さくな笑顔で運転手に近寄る。
「私もその地区に用があるので乗せてもらえませんか。代金ならば支払えます」
カイが提示した札束に運転手は目を丸くした。当然だろう、金額はD国の平均年収と同額なのだから。
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