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 振り返れば、学校って空間はとんでもなく雑なグループだったよな、と思う。  大学や高校はまだしも、小学校なんてたまたま同じ場所に生まれたっていうだけの集団だ。そんなごった煮のような集団の中で、『みんなと仲良くしましょう』なんて言われても困る。本当に相性のいい人間がごった煮の中に含まれているかどうかは、ガチで運頼みだ。  でもだからそこ、本来ならば会話もしないような人間と友人関係になることもある。学校ってやつは雑なグループ分けだけど、でもまぁ、そういう意味では交友関係を強制的に広げるチャンスなのだろう。  さて、この学校と同じく雑で、そして思いがけない出会いがある集団カテゴリは大人になっても存在する。  そのひとつが、アパートだ。いや、マンションでもいいけれど……とにかく『同じ場所に住んでいる』というだけで、年齢も性別も職業も勿論趣味さえバラバラな人間が雑に出会うことができる。  小中学校が一緒か、それともアパートが一緒か。そんな雑な出会いでもなければ僕は、彼とは絶対に交わらない世界線で生きていたはずだ。  この出会いが果たして僕の人生にとって良いモノなのか、悪いモノなのか。……なんとなく今のところ後者一択な気がしているのだが、ともかく――僕は彼に出会ってしまった。というか、あー……彼に、見つかってしまった。  あんまり平凡な人生とは言い難い自信はある。常に不幸が肩口から顔を覗かせて僕の様子を窺っているような生活だった。その中でも、彼の話は大概の人間が『漫画の読みすぎでしょ(笑)』と一笑に付すんじゃないかと思う。  だってたまたま越した格安アパートの隣人が、怪しい霊能力者(厳密には霊能力者ではないらしいけどそんな詳しい分類一般人にはどうでもいい)だったなんてさ。  ……ね、ほら。そんな話、真面目な顔で打ち明けたところで、酒の肴になるかどうかも怪しいでしょう?  だからまー、作り話乙(笑) くらいの気持ちで聞いてくれて構わない。  これは僕こと阿佐科夏加が、理不尽な隣人・衣衣音丸氏にむやみやたらと巻き込まれるだけの、ささいな怪談話だ。
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