夢見枕

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夢見枕

 見たい夢に関係のあるものを枕の下に忍ばせておくと、その夢が見れる。古典的なおまじないだ。  このたび、それを本当に実現できる枕が入荷した。店長が「おいしいものを食べられる夢が見たい!」と言うので、僕は飲食店のチラシを集めて、例の枕の下にセットしておいた。店長の昼寝中にそっと様子を伺うと、最初はしまりのない笑顔ですやすや寝ていた。だが次第にその表情は苦悶をたたえ、額には汗。身体を揺すると、店長は飛び起きて僕をにらむ。 「春宮くん、変なチラシ入れたでしょ!」 「良い評判のものばかり選びましたよ?」 そう言いながら僕は、枕の下から「君はこの灼熱地獄に耐えられるか? 特製激辛ラーメン」のチラシをつまみあげた。
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