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グラスに一度口をつけると、たちまち広がる芳醇な香り。炭酸の清々しさと共に苦味がやってきて、果実のような甘みがじんわりと残る。アクセントの黒胡椒もピリリと効いた。
瀧澤はくぅーと顔中にシワを作って、パッと口を開いてから、信じられないといった様子でグラスを眺めた。夕陽に照らされた琥珀色の輝き。それを一気に飲み干してしまいたい衝動を抑え、グラスをテーブルへ戻す。
「さて」
独り言は胸の高鳴りの表れだ。
両方の手のひらを擦り合わせながら、焚き火へと体を近づける。
焚き火台の炎の上でモクモクと煙を出しているのは、この日初おろしの小型燻製器だ。
既に持っているダッチオーブンやメスティンを使っても燻製を作る事は出来たが、やはり専用のものが欲しくなってしまい買ってしまった。
新しいキャンプギアを初めて使う時、瀧澤は童心に帰ったようになる。
燻製を待ちきれなくなったのも、早くウマイものを食べたいという欲求の他に、道具の性能を確かめたいという気持ちがあったためだ。
耐熱グローブをはめて、ステンレス製の燻製器の蓋を開くと、一気に煙が立ち上る。煙とは思えないほどフルーティーなウイスキーオークが燻された香り。
長いトングで中から取り出されたのは、大きな骨付きの鳥モモ肉。表面はまんべんなく茶色く染まり、てらてらと光沢を放っている。
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