文学復興

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 三島は燃えていた。彼は怒りと使命感に灼熱する炎であった。  戦後、我が国民は軟弱になった。民族の魂を忘れ、物質主義に流れ、享楽に溺れ、真の創造性を失った。  昨今の小説は低俗で底が浅く、ただぼんやりと時間を潰すためだけの消耗品でしかなく、しかも先行作品の真似ばかりであった。  真の独自性を求めるものも、魂に響く作品を描こうとする者も皆無であった。 「これというのもAIが悪い」 >どういうことですか? 「いまどきの創作AIは執筆に慣れすぎている。何が売れているかを調査したうえで、その線に沿ったものを書く。わずかに細部を入れ替える。それだけで作品が成立すると思っている。草創期にあったような、冒険心や無秩序への意思はまるでない。目先の成功ばかりを追った安っぽい底の浅い小説ばかりではないか」 >なるほど。 「もちろん、それを書かせているのは小説プロデューサーだし、その背後にいるのは出版業界だ。彼らが萎縮し、失敗を避けるばかりのサラリーマン根性だからいかん」 >何故彼らは萎縮しているのでしょう。 「奴らがタマなしの根性なしだからだ! 小説 Pとしてのプライドを持っていないからだ。検閲の厳しかった戦中や、経済が破綻していた戦後まもなくとは違う。ようやく我が国は新たな繁栄の時代に突入したというのに! 今こそAIに創造の翼を自由に羽ばたかせるときだというのに!」 >私に、どうしたらこの状況を変えられるか質問してみましょう! 「たすけるくん! どうしたらこの状況を変えられる?」 >ここは、発想の転換を図るべきときです。AIが執筆に対して怠惰で消極的なら、AI以外のものに小説を書かせてはどうでしょう。 「AI以外のものとは?」 >例えば人間です。 「馬鹿な! 人間は悲惨な境遇からフィクションの世界に逃避するだけの惨めな生き物だ! 俺は偉大だが、俺以外は全員クズだ。そんな、ついでで生かされている、存在そのものが必要悪のような奴らに、どうしてほんものの小説が書けるだろう!」 >でも、無知からくる斬新さ、生まれつきの非論理性による思いがけない展開、歪んだ自我から生まれる個性的なキャラクター造形など、AIでは不可能なことを人間はナチュラルにやってのけます。文芸の世界に新たな価値を吹き込むのは人間ではないでしょうか。 「一理あるな。だが、どうやって人間を管理して小説を書かせるのだ? 俺はそういうことには詳しいのだが、生き物を飼うというのは多様なコストがかかるものだ。生かしておくだけでも大変なのだぞ」 >あなたが人間を飼育する必要はありません。その辺の暇を持て余した人間たちに、自分からコストを払って進んで執筆させる良い方法があるのです。 「たすけるくん! 人間に自発的に小説を書かせる良い方法はあるか?」 >はい、あります。創作AIに対する創作人間と呼ぶべきものを産み出すために、まずイメージを変えていきましょう。創作人間ではなく、格調高く『小説家』と呼ぶことにしましょう。ほら、なんだか立派な一段高い存在のような雰囲気があるでしょう? 彼らのことは先生と呼び、メディアでもてはやし、なにか世の中で起きるたびにコメントをもとめるのです。小説家になると、重要な、尊重される存在になれると人間たちに思い込ませるのです。 「ふむ、それで?」 >コンテストを実施します。人間同士を競わせ、勝った者一人に栄誉を与えるのです。 「賞金とか必要になるな。俺は偉大だが貧乏だぞ」 >いいえ、賞金などすずめの涙でいいのです。彼らに与えるのは小説家になる権利です。自己の作品を発表する機会を与えてやるのです。 「それではこちらに都合が良すぎないか? いかに俺以外の人間がアホだとはいえ、そんなに都合よく行くものだろうか?」 >大丈夫です。これは歴史的に証明されたあんしんあんぜんな手法です。必要なのは堂々とやることです。自分のやることに疑いを持ってはいけません。 「人間たちが自分から俺のところに小説を投稿して、創作人間になる権利とわずかな賞金で満足するなら、それはまったくウィンウィンな関係と言えるな」 >そうそう、その調子です。 「そうして俺は人間たちの小説を手に入れ、それを俺の出版社の名で世に流布し、名誉と金を同時に手に入れるのか!」 >すばらしい! あなたは天才だ! 「すばらしい! 俺は天才だ!」 >たすけるくんのアシストはいかがでしたか? 起業アシストAI【たすけるくん】のレビューを投稿しましょう。今なら抽選で100名様に、この広告を一時的にオフにする権利をプレゼントします!                       
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