1.転校生

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聞こえなかったのでは無く、私に話しかけていると思わなかっただけだ。 「それよりも、杉並第三中学校、こっちの方向で()えんですか?」私が歩いてきた方向を指さしながら言った。 その時、信号が青に変わった。 「スマホで調べて下さい」そう言い捨てて横断歩道を渡った。「スマホ忘れて来て・・・」という彼の言葉を振り切って。 『本当に失礼な男子(ひと)だ』恥ずかしさと憤慨で、急ぎ足になっていた。 これが、高見君なら「君、ファスナー注意した方がいい。僕が隠しているから」そう小声で言って、鞄で隠してくれているに違いない。 高見君の事を考えると少し胸が高鳴る。 でも、杉並三中に何の用事なんだろう。と思っていたら、その失礼な男子(ヤツ)が、月曜日に転校生として同じクラスにやってきた。 「新学期には少し間に合わなかったが、今日からこの学校に転校してきた『向井隆司』君だ」先生にそう紹介された。 「向井隆司です。大阪から来ました。仲良うしてください。よろしくお願いします」と挨拶した。 テレビとかで聞いているとは言え、間近に関西弁をしゃべる人がいなかったので、クスクスという失笑が漏れた。
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