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井の頭公園への階段を降りると、左手の先の方のベンチに牧野さんが座っているのが見えた。
「さあ、行ってこいよ」野島君が言った。
「ああ、ちょっと気持ちを整理が・・・」そう言って、胸を撫で降ろした。
「整理ついたか、じゃあ、行ってこい」
「今度はちょっと、心の準備が・・・」
「アホンダラ! サッサといかんかい」私は思わずそう言って、アイツのケツを思い切り蹴った。
「ウワッ」そういってよろけたが、それを勢いにトボトボと牧野さんに近づいて行った。
「アイツのケツに伊藤さんの足跡がくっきり付いてるね」靴裏の土の跡が付いていた。
「ほんと、付いてるね」
「まあ、それもいいさ」
アイツの近づく気配に気付き、牧野さんがベンチから立ち上がり、ふたり向き合った。
「もう、大丈夫だろう。伊藤さん行こうか」
「うん」
ふたりで駅の方へ向かった。
「伊藤さん、女性の君に言うのは失礼かもしれないけど、男前だね」
「野島君もとても変わったね。良い意味でね」
「アイツのおかげかな」
「そうね」
「こんな時に言うのはどうかと思うけど、N高の入学式の日に、伊藤さんに告白していいかな」
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